月刊アニメディア2007年9月号 「機動戦士ガンダム00」水島精二監督インタビュー
水島精二監督制作快調インタビュー!!
新『ガンダム』は「水島精二監督」と聞いて期待はさらに膨らむ。世界に真正面から立ち向かう、逃げない少年主人公を描かせたら天下一品! 制作も佳境の中、水島監督に聞いた!
最初の「ガンダム」案は宇宙生物コンタクトもの!?
――監督が『ガンダム』を受けることにした、決め手は何だったんですか?
水島:実は、お話をいただいた時に、僕は「ガンダム」に詳しいほうじゃないので、もっと適した方がいるんじゃないですか? とプロデューサーにお話したくらいなんです。ただ、いろいろお話を聞かせていただく中で、『ガンダム』の監督として声をかけてもらえる機会はそうあるもんじゃないよなと思い至ったり、周りの人に聞いてみると、みんな「やれよ」と言うんですよ。「君の『ガンダム』を見てみたい」と言ってくれる。「いい意味でも、悪い意味でも、楽しみだ」と(笑)。じゃあ、やってみるか、そんな感じでしたね。
――で、実際やってみていかがです?
水島:もしかして『ガンダム』らしからぬ『ガンダム』が姿を見せてきたかな? と言った感じです(笑)。
なにせ僕は、見た『ガンダム』と言えば「1st」と「0083」ぐらいで、あとは正直ほとんど見てないんですよ。なので、影響が薄いんじゃないかな。今回のスタッフって、今までの『ガンダム』にかかわっていない人間が多くて。もっと言うと、サンライズで仕事をしてない人間が割と多かったりするんです。そのせいか、絵そのものも画面から伝わる雰囲気も、従来の「ガンダムらしさ」という方向には向かってないのかな、という気はしてます。
――タイトル「OO(ダブルオー)」にはどんな意味があるんでしょう?
水島:それは…「OO(ダブルオー)」は物語を象徴するというか、キーワードになっているので、最初からコレだぁ!
とか言ってしまわないほうがいいと思うよ(笑)。本編で語るまで待っててください、ということにしておこうよ。
――今回の物語の骨格は、どうやって決めていったんですか?
水島:最初に「僕が『ガンダム』をやるんだったら」ということで出した話のラインはふたつあったんです。
ひとつは、宇宙生物とのコンタクトもの。「外宇宙の生物と戦う『ガンダム』やろうぜ」と言ってたんです。母星まで宇宙生物を根絶やしに行くの、木星の海を通って。嘘じゃないって(笑)本当に出したんだよ。僕はどっちかっていうと、そっちがやりたかったんだから(笑)
最初は「いいですねぇ」とか言う人もいたんだけど、何回か打ち合わせをするうちに(笑)……結局、やっぱり戦争という状況の中でのガンダム。兵器として存在する形に…ということになり。当初容易していたもうひとつのライン、「戦争の無くならない世界、地球はひとつになれない話」ということになった。
――「地球はなぜひとつになれないのか」の「なぜ」を描く話ということですか?
水島:まあ、そういう事かな。
僕は、いわゆる『ガンダム』世界には疎いけど、でも、今この世界にだって、「諍(いさか)いの形」というのはいくらでもあるわけだし、それを切り取って伝えることができたら、それだけ価値があるんじゃないかと思ったんですよ。
今ある戦争を題材にするとかいうんじゃなくてね、キャラクターに感情移入しながら一緒に見られる世界が、実は現実に近いものだというのがわかれば、見てくれる人に何か残せるかもしれない、残せたらいいなと。
――ソレスタルビーイングは「宇宙の義賊」だと聞きましたが…。
水島:義賊…まあ、義賊は義賊かもしれないですね、一応「戦争根絶」という目的を掲げているわけだから。でも、そのために犠牲が出ようと、彼らは躊躇しませんからね。
扮装をやめさせるためには、多少の犠牲は厭わない人たちです。ゆえに、行動にはまったく躊躇がない。だから怖いわけですよ、介入される側にとっては。テロリストと変わらないんだから。自分たちの主義、主張を通すために武力行使をするのがテロリストだとしたら、ソレスタルビーイングの行動は、まさにテロリストですよ。彼らは、外からの批判には耳を傾けないですしね。
「平和のための介入」!?
「できるわけ、ないじゃん」
――最初の15秒スポットにあった「平和のための武力介入」とかいうのを聞いて、「そんなこと、できるわけないじゃん」と、正直思ってました…。
水島:そりゃ、みんな思うでしょう(笑)矛盾してますから。非常に正しい反応です。まぁ、あのスポットはそういう勘違いも含めて、盛り上がるための物ってことで(笑)。そこでわざわざ矛盾を提示する意味は何かしらあるわけだから、そこは頑張ろうと。
「世界」というのはいろんな思惑で成り立っているし、人の感情というものがある限り、「諍(いさか)い」というのは必ず生まれてくる。絵空事の正義感で押し通す主人公って、やっぱ嫌じゃないですか。葛藤というのは、持っていて欲しいし…。
「死」と隣り合わせになれば、相手を疑う気持ち、疑心暗鬼もどれだけ強くなるだろうか。安全な土地にいる人から見れば狂っていると思えるようなことも、生き残るのに必死な瞬間になれば、やってしまうかもしれない。
いつか自分が、そういう場に座らせられることになるかもしれない、そんな恐怖感みたいなものも描いていけるかな、と思ったりしてます。
で、上がってきたものを見て、僕はもうコレだと思った。高河さんならイケると、確信してしまいましたね。
受けていただけると決まった時点で、次はアニメのキャラクターを描いてくれる人を誰にするか。アニメのデザインとして上がったものが、元のデザインと違うなんて事がままあるんだけど、今回そうはしたくない。高河さんの味を失わずアニメ用にその人の味も乗せる。ということで、千葉道徳さんに声をかけさせてもらいました。
千葉さんは『バジリスク』でも素晴らしい仕事をしていて、原案の味をそこなわず、アニメーションなりの「見栄」をきちんと考えて絵を構成できる人です。「一緒に、大作やろうよ~」と(笑)、お願いしたんです
――監督がイメージする、キャラの魅力を紹介していただけませんか?
水島:今はまだ、黙して語らず、ぐらいがいいんじゃないかな。
まあ、みんな、暗いヤツです(笑)。あんまり笑わないし。でも、なぜ笑わないのか、なぜガンダムに乗っているのかは『OO(ダブルオー)』の描くテーマとつながっているので、あまり説明しても興ざめだと思うんですよ。
そこはフィルムでね(笑)。謎の多いキャラクターたちなので、そこもむしろ楽しんで欲しい。とにかく「見てくれ!」ですよ。
あ、ひとつだけネタバラシ。全員、偽名ですよ。
――最後に、読者へのメッセージをお願いします。
水島:アニメディア読者は、小学校高学年くらいから高校生ぐらいの人たちがメインだと思うんですが、この『OO(ダブルオー)』は、まさにそんな世代に見てもらえたらと思って作っています。
痛くて、辛い話もあるけれど、エンターテイメントとしても楽しんでもらえると思いますから。ガンダムもカッコよくガンガン動いてますから!
――そのガンダム、設定の中で型式番号「004」が欠けてたんですけど…!?
水島:…それは…秘密です(笑)
水島精二監督 ●PROFILE
東京都出身。ゲーム映像等の制作をへて、アニメーションの演出に。『ジェネレーターガウル』で初監督。以後『地球防衛企業ダイ・ガード』『シャーマンキング』『鋼の錬金術師』『大江戸ロケット』などを手がける。大作をじっくり回していく傾向が強いようで、旬の作家としては寡作。この『ガンダムOO』がテレビシリーズ監督の6作品目。
■月刊ニュータイプ2007年9月号
「機動戦士ガンダム00」キャラクターデザイナー・千葉道徳インタビュー要約版
――今回のデザイン作業を振り返って。
高河ゆんさんの絵は以前から好きでしたが、それを自分がアニメ用に起こすことになるとは思わなかったので、自分にできるか不安がありました。ただ、人の絵を描くのは好きで、人の絵をいただいて、こういう処理があるのか、どうしたらそれっぽく見せられるのか、と考えながら作業するのは非常に楽しいです。
――クリンナップされた設定画を見ると、元の絵柄に加え千葉道徳テイストもしっかり出ているようだが。
描線ではなく影のつけ方による影響が大きいのかもしれません。影はかなり自分の好みでやらせてもらっていて、、例えば、キャラクターの肌や髪にハイライト(光沢)を入れないようにしているんです。
――骨格と筋肉のニュアンスを強めに出しているのもポイントのひとつだ。
少しリアル寄りなんです。例えば刹那なら、戦場を何度も乗り越えているのだから、かなり筋肉質になるんじゃないかと。骨格がしっかりしてないと、ガンダムのような高機動兵器には乗れないと思いますし。F1ドライバーのようにすごいGに耐えているわけですから、あんまり首の細いキャラクターだと違和感が出るんじゃないと思ったんです。
一番気に入っているキャラクターは、渋い中年、人革連のセルゲイ中佐だとか。
やっぱり「ガンダム」だから、おっさんに頑張って欲しいんです(笑)。顔がいいキャラクターは、きれいに描かなきゃいけないから疲れるんです。そこでむさい人を描くと癒されますね。
――もちろん、刹那たちマイスター4人への思い入れを強く持っている。
みんないいキャラクターになればいいなと思っていますよ。「00」は美形キャラものと思われているかもしれないですが、かっこいいというのは内面的なものがあってのことで、顔がかっこいいのと「いい顔してる」とは違うんですよ。ドラマに即した形でそういう意味での「いい顔」を描いていきたいですね。
4人のガンダムマイスターのデザインポイント
刹那・F・セイエイ
ポイントは目です。
水島監督から「一度見たら忘れらない目」という注文がありました。
ロックオン・ストラトス
親近感のわくキャラクターなので、シャープすぎても、やわらかすぎても駄目で難しい。
アレルヤ・ハプティズム
ヘルメットをしていても、前髪が前に下りているので、作画時に気をつかう。
ティエリア・アーデ
水島監督から「絶世の美形」という注文があって、かなり困った。
※あくまで要約です。本文をお読みになりたい方は、月刊ニュータイプ2007年9月号をお求め下さい。